電子商取引(EC)の巨人である米Amazon.com社が、タブレット端末市場に参入した。低価格を武器に早くも市場を席巻している。同社の狙いと実力を、端末の分解やUI解析を通じて検証した。

これがKindle Fireだ

 米国の2011年末商戦。急成長するタブレット端末市場の台風の目となったのは、韓国Samsung Electronics社やソニーなど大手機器メーカーが投入した製品ではなかった。世界最大手の電子商取引(EC)企業、米Amazon.com社のAndroid搭載タブレット端末「Kindle Fire」である。Kindle Fireは2011年11月15日に発売されるや、一気にAndroidタブレット市場でシェア首位に躍り出た。

 米国の調査会社IHS iSuppli社によれば、Amazon.com社は2011年第4四半期、つまり発売からわずか1カ月半で約390万台を出荷する見込みだという。これは同四半期におけるタブレット端末の台数ベースのシェアで13.8%に相当する。米Apple社の「iPad」シリーズが65.6%と独走状態を維持しているのに変わりはないが、3位のSamsung Electronics社の「Galaxy Tab」シリーズの4.8%を大きく引き離す。

 Amazon.com社は通常、Kindleシリーズの出荷台数を公表しないが、同社は2011年12月15日、「Kindle Fireを含めてKindleシリーズの出荷は3週連続で100万台/週を超えた。中でもKindle Fireの出荷が最も多い」と述べた。

逆ザヤの可能性

 Kindle Fireの販売が好調な最大の理由は、199米ドルという米国人にとっての「マジック・プライス」を実現したからだ。これまで、大手メーカー製タブレット端末の価格の相場は、画面サイズが10型クラスで約400米ドル以上、Kindle Fireと同じ7型でも約300米ドル以上だった。有名ブランド品としては、破格と言える。

 Kindle Fireの価格については、「逆ザヤ」との指摘がある。IHS iSuppli社は、Kindle Fireの構成部品を解析し、部品コストやEMSでの組み立て費用を合計したハードウエアのコストを201.7米ドルと試算している。一方で、「決して赤字ではない」とする見方もあるが、それでも利幅がかなり薄いのは間違いない。

『日経エレクトロニクス』2012年1月9日号より一部掲載

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