雑誌 特集

テレビの未来

高橋 史忠、Phil Keys、内田 泰=日経エレクトロニクス
2011/12/22 17:30
 

第1部<全体像>
携帯端末が技術を牽引
次世代に向けて始動

激しい価格下落が続く家電の王様「テレビ」の存在感が小さくなっている。だが、この状況は次世代テレビに向けた生みの苦しみと見た方がいい。技術の牽引役「携帯端末」の普及が、スマートで高精細な大画面テレビへの進化を後押しする。

映像サービスの技術牽引役が交代

 米国でテレビ放送が始まってから70年。長く家庭向け映像技術の中心を担ってきた「テレビ受像機」が、テクノロジー・ドライバー(技術牽引役)の座を譲り渡そうとしている。代わってそこに座るのは、タブレット端末やスマートフォンといった携帯端末である。

 今後数年は携帯端末が映像関連の技術やサービスの開発で主役となり、テレビという映像メディアを再定義する。放送やインターネットといった映像コンテンツの配信経路、そして表示画面のサイズの大小を問わない新しい映像メディアにテレビは生まれ変わる。

 テクノロジー・ドライバーの交代という動きの背景には、テレビという映像メディアが転換期を迎えていることがある。インターネットを使った動画配信サービスや、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などの存在感が、これまで以上に高まっているからだ。視聴する映像コンテンツの選択肢が増えれば、ユーザーは必ずしも放送コンテンツを選ぶとは限らない。

 これは同時に、映像を視聴する機器がテレビだけではなくなったことも意味する。「消費者にとって、テレビという機器が娯楽の柱という認識は薄れつつある」。野村証券 エクイティ・リサーチ部 エレクトロニクス・チーム エグゼクティブ・ディレクターの御子柴史郎氏は、現在のテレビが置かれた状況をこう指摘する。

『日経エレクトロニクス』2011年12月26日号より一部掲載

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第2部<ソーシャル・テレビ>
テレビ業界を揺るがすSNS
将来は映像配信の主役に

米国で「ソーシャル・テレビ」がにわかに注目を集めている。SNSの基盤を使った映画レンタル・サービスも始まった。SNSは近い将来、テレビ放送局に取って代わる存在になるかもしれない。

Facebookは映像コンテンツの新たな配信基盤

 米映画会社のMiramax Films社は2011年8月、同社の映画コンテンツをFacebook上に配信するアプリケーション・ソフトウエア(以下、アプリ)「Miramax App」のベータ版の提供を開始した。ユーザーはFacebookの専用仮想通貨「Facebook Credits」を使って、映画をストリーミング形式でレンタル視聴できる。Facebook上の友人と映画に対する感想を共有したり、視聴を推薦し合ったりすることが可能だ。

 Miramax Appは、映像配信プラットフォームを提供する米ベンチャー企業のOoyala社が開発した「Ooyala Social」というアプリを利用している。Ooyala社は米ESPN社など大手コンテンツ企業を顧客に抱えており、配信する映像の再生回数は、既に月間10億回を超えるという。Ooyala Socialは、米国最大手の下着メーカーであるVictoria's Secret社なども採用している。Victoria's Secret社は、これまでケーブル・テレビ(CATV)などを通じてテレビ受像機でしか見られなかった同社の新作下着のファッション・ショーをFacebook上で配信している。

二つの期待

 米国のテレビ業界で、SNSを利用した「ソーシャル・テレビ」に対する注目度がにわかに高まっている。従来のテレビ業界の枠組みを根本から変える可能性を秘めているからだ。

 ソーシャル・テレビに対するテレビ業界の期待は、大きく二つある。一つは、映像コンテンツのファンの獲得。特に“テレビ離れ”が叫ばれる若年層が主なターゲットだ。SNS上に番組のサイトを開設し、番組関連のコンテンツを提供する。SNSの投稿や共有機能などを通じて、コミュニティーを形成する。口コミによるコンテンツの推薦も、業界関係者にとって大きな魅力だ。

 もう一つは、SNSの豊富な機能や視聴動向分析のデータを活用して新たなマーケティング手法や収益化モデルを構築することだ。例えば、「Facebook向けにアプリを提供するコンテンツ事業者などは、FacebookのAPI経由でコンテンツを視聴したユーザーの性別や年齢、学歴、職歴、友人のリストなどの情報を無記名で入手できる」(Ooyala社)。

『日経エレクトロニクス』2011年12月26日号より一部掲載

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第3部<超高精細テレビ>
超高精細の新たな視聴体験
家庭向けで現実味が増す

フルHDを上回る超高精細映像が家庭に届く時期が近づいている。家庭用のテレビやプロジェクターの準備は、この1年で大きく前進した。動画圧縮技術や配信技術の進化が、「究極のテレビ」の時代をもたらす。

超高精細映像を家庭に届ける

 「ここまでの映像表現が可能になったのか…」。FTTHを使った薄型テレビ向けの映像配信サービス(IPTV)「ひかりTV」を手掛けるNTTぷららの永田勝美氏(取締役 技術本部長)は、フルHD(1920×1080画素)を超える高精細映像を映し出す大画面テレビのデモを見て、大きな可能性を感じた。

 デモは、東芝が2011年12月に製品化した、4K×2K(3840×2160画素)の映像(以下、4K映像)を表示できる55型液晶テレビのものである。「現状では、多くの映像サービスでようやくHD化が本格化したばかり。フルHDの4倍の画素数を備える映像など、ユーザーに受け入れられるのか」。デモを見る前、永田氏は4K映像に懐疑的だった。

 だが、実際に映像を見て、考えを改めたという。従来のテレビの視聴体験とは明らかに異なっていたからだ。「映像にかなり奥行きがあり、まるで3次元映像を見ているような立体感がある。これは面白い。そう思った」。永田氏は、こう振り返る。

 ここにきて、フルHDを超える高精細映像を家庭に届ける技術開発のうねりが広がっている。まず本格化したのは、液晶テレビや液晶プロジェクターといった家庭用の表示装置、そして映像制作の現場で使われる業務用ビデオ・カメラの製品化だ。その間をつないで映像コンテンツを家庭に届ける際に使う動画の圧縮技術や配信技術でも、超高精細映像を扱うための新しい技術開発の取り組みは活発になっている。

『日経エレクトロニクス』2011年12月26日号より一部掲載

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