2011年11月~2012年1月号では、ダイセルが生み出した、早期に生産性向上などの成果を上げられる革新手法「ダイセル生産方式」(ダイセル式)の基本思想や適用ステップなどを解説する「注目のダイセル式を知ろう」をお届けします。

日々の変調に応じて継続的に改善

 前回(2011年12月号)は、ダイセル式のステップアップの仕組みとして、5段階あるうちの第0~2段階について解説した。第0段階で悪さ加減を認識して、目指す姿と基本計画を検討し、第1段階ではムダ、ロス、ヌケの徹底的な排除による作業者の負担軽減を図る。そして、第2段階でベテラン作業者のノウハウをミエル化・標準化して、誰もが使える仕組みを構築する。最終回となる今回は、第3段階以降について紹介する。ここで、改善した仕組みを根付かせ、次代につなぐのである。(本誌)

第3段階──後戻りさせない仕組み
 第2段階までで標準化した運転方法やシンプルにした仕組みを元の状態に後戻りさせないために「知的生産システム」を構築するのが、第3段階の目的である(図)。

 知的生産システムとは、第2段階で標準化した運転方法やシンプルにした仕組みを基に、情報技術を駆使して新たに構築し直した生産システムのこと。「必要なときに、必要な人に、必要な加工度の情報がミエル」ことを意識している点も特徴だ。こうした知的生産システムの基本仕様は、第0~2段階の各ステップを着実に実行することで明確になる。

 従来の生産システム設計の課題の1つとして、他の生産システム設計者が見ても理解できない仕様となるケースがある。生産システム設計者の独自の色が出すぎてしまい、実際の使い手である作業者にとって生産システムがブラックボックス化してしまうのだ。

〔以下、日経ものづくり2012年1月号に掲載〕

図●知的生産システム構築の流れ
左側の総合オペラビリティスタディの結果が、右側の知的生産システムのガイダンス画面、上位画面、工程監視画面の仕様として展開されるように手法化されている。ガイダンス画面では操作の手順や要領、運転ノウハウなどを、工程監視画面では各工程における運転状況を確認できる。
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小園英俊(こぞの・ひでとし)
ダイセル 生産技術室 生産革新センター 所長
1991年京都工芸繊維大学大学院工芸化学研究科修了後、ダイセル化学工業(現・ダイセル)に入社。工場の運転支援システム、生産管理システムの設計・構築に従事。1998年から網干工場において次世代型化学工場構築プロジェクトに関わる。2002年から生産革新の全工場展開を担当する。2009年から現職。現在、全社の生産革新の維持・向上のための指導と企画推進を行っている。