生産は海外でもノウハウは日本に残す
生産準備領域におけるエンジニアリング業務、中でも工程計画には、ものづくりの在り方に関わる本質的な問題が幾つかある。そのために、以下に述べるような現象が引き起こされている。
1つは、営業的機会損失。つまり売れるはずなのに売ることができない状況は、今日の製造業における大きな経営課題である。まずは、この点について、生産技術者の視点から捉え直してみたい。
初期流動で能力低下の理由
競争がグローバル化し、製品開発力が拮抗する中では、技術レベルや企画レベルが高い製品であっても、量産製品が販売競争力を維持できるのは発売開始後間もなくの限られた期間である。しかし、この期間は、量産開始直後の初期流動期間に他ならない。
初期流動期間には多くの不具合が発生し、企画通りの台数を生産できないことに生産技術者は悩まされる。かといって、残業でカバーできる範囲は限られている。
図に示すように、製品企画段階での生産能力と、量産時点での生産能力の間には相応のギャップが存在するのが一般的だ。企画段階から生産準備を進めるに従って、実現可能な生産能力は低下し、量産開始時点では企画当初の生産能力を得ることができない。
それでは、なぜ初期流動期間において生産能力の低下が起こるのか。それは、生産準備プロセスにおけるエンジニアリング・ロスが影響するためである。
〔以下、日経ものづくり2012年1月号に掲載〕
レクサー・リサーチ 代表取締役社長