前回(2011年12月号)から、本質を捉えればものづくりの現場で非常に使える「テイラー展開」について学んでいます。皆さんに伝授した西成流テイラー展開の定義、覚えていますか?「 どんな複雑な曲線も、小さな一部分を切り出して拡大すれば1次関数あるいは2次関数で近似できる」というもの。複雑な記号が並ぶ公式を学生時代に習った人もいると思いますが、このコラムをお読みいただいている皆さんは忘れてしまっても大丈夫っ(笑)。私の経験から言うと、テイラー展開は1次関数と2次関数が使えれば十分に足ります。なので、公式に頼らなくても、答えをいつでも導き出すことができるんです。
答えをいつでも導き出すコツは、グラフ上の曲線を小さく区切り、区切った部分をよ~く見て、直線か放物線を当てはめていくアプローチを取ること。y=sinxのx=0付近なら、直線(y=x)を当てはめてみます。cosxのx=0付近なら、放物線になっているので2次関数(y=ax2+1)を当てはめてみるのです。cosxの場合は微分すると簡単。y=ax2+1とy=cosxをそれぞれ微分し、イコールで結べば2ax=-xとなって、aは-1/2と解けます。ただし、1点だけご注意を! これが成り立つのはxが小さい場合だけです。
〔以下、日経ものづくり2012年1月号に掲載〕
東京大学 先端科学技術研究センター 教授