2010年6月11日、日本貨物航空(本社千葉県成田市)の定期貨物航空便でエンジンが故障し、出発地の成田国際空港に引き返すという事態に陥った。トラブルを招いた原因は、高温環境下で進行するタイプの腐食だ。定期検査では予兆らしき現象を確認できていたが、就航中の故障を未然に防ぐことはできなかった。

 エンジンのトラブルが起きたのは、日本貨物航空の定期166便として就航していた貨物航空機「747-400F」(米Boeing社製)。当日は、成田国際空港から米国のテッド・スティーブンス・アンカレッジ国際空港に向けて出発したところだった。

 フライトレコードによれば、同機が成田国際空港の滑走路を離陸したのは21時53分41秒。そのわずか7秒後には、エンジンの異常を伝えるメッセージがコックピットのモニタに表示された。故障したエンジンは、全部で4基あるうち左翼の外側に搭載されている「第1エンジン」だった。

 直ちに副操縦士が成田飛行場管制席および東京出域管制席にエンジントラブルの発生を通報するとともに、いったん高度を上げて燃料を投棄した上で、成田国際空港に引き返す方針を伝えた。その後、同機は約1時間かけてほぼ全ての燃料を投棄し、同日の23時8分に成田国際空港に無事着陸した。同機には機長と副操縦士に加え、社用で移動する予定だった日本貨物航空の従業員1人が搭乗していたが、3人にケガはなかった。

〔以下,日経ものづくり2012年1月号に掲載〕