FPD市場の牽引役が、大型パネルから中小型パネルに変わりつつある。テレビ市場の成長が鈍化し、スマートフォンやタブレット端末市場が急拡大しているからだ。これに伴い、中小型パネルの技術開発競争が激しくなってきた。500ppiに迫る超高精細化が加速する他、低消費電力化は1mW単位で削減が進む。樹脂基板を使ったフレキシブル・パネルもいよいよ実用化されそうだ。

メーカー各社が中小型パネル事業に注力

 「中小型パネル事業は、カスタマイズ性が高いビジネス。3社の優れた技術を融合することで、付加価値の高い製品を提供していける」──。

 ソニーと東芝、日立製作所の3社がそれぞれ手掛ける中小型パネル事業子会社を統合し、産業革新機構が主体となって2012年春に設立される「ジャパンディスプレイ」。2011年11月15日の記者会見で、新会社の代表取締役社長への就任が発表された大塚周一氏は、自らが率いる事業に対する自信を、冒頭の言葉で表現する。

 3社の事業統合で発足するジャパンディスプレイは、金額ベースで世界最大の中小型液晶パネル・メーカーになる。さらには、パナソニックから大型液晶パネルの生産工場であるパナソニック液晶ディスプレイ 茂原工場を買収し、第6世代のガラス基板を用いた低温多結晶Si(LTPS)TFTの生産ラインを構築する計画である。2016年3月期の売上高として、2012年3月期における3社の合算値の1.3倍となる7500億円の目標を掲げる。

各社が中小型パネルへシフト

 中小型パネル事業のトップシェア堅持をもくろむジャパンディスプレイ。ただし、中小型パネル事業への取り組みを強化するのは他社も同じだ。

 現在、大型液晶パネル事業を手掛けていたメーカー各社が、こぞって中小型パネル事業に軸足を移し始めている。シャープは、大型液晶パネルの生産工場だった亀山第1/第2工場を、中小型液晶パネルの生産にシフトする。韓国Samsung Mobile Display(SMD)社は、第5.5世代のガラス基板を用いた有機ELパネルの生産ラインを稼働させた。韓国LG Display社や台湾Chimei Innolux(CMI)社、台湾AU Optronics(AUO)社といった大手メーカー各社も、中小型パネルの開発・生産に力を入れる。

『日経エレクトロニクス』2011年12月12日号より一部掲載

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