2011年10~12月号でお届けする「これだけは押さえたい 金型の実務」では、最終製品の付加価値を左右する金型について、現状の設計・製作プロセスに潜む課題を指摘しつつ、金型の使い手と造り手の双方が互いに高め合っていける実務の在り方を提言します。

「トライレス」実現への道筋

 前回(2011年11月号)では、金型設計・製作におけるデザインインの有効性を示した。金型の使い手である製品設計部門が詳細な金型仕様書や品質の高い3次元データを作成し、それに基づいて金型の造り手(金型メーカー)が工数や費用の見積もりを迅速かつ正確に行うことで、金型設計・製作の効率を高められるというものだ。

 デザインインを実現する上では、金型構造の設計が重要なカギとなる。そこで今回は、金型構造の設計手順を詳しく説明していくとともに、一連のプロセスをさらに効率化する際の課題と解決策を提示する。

スペースを事前に確保

 金型の構造部の設計では、初めに金型仕様書に基づいて成形品を配置する(図1)。後でランナーやアンダーカット構造を加えるので、この段階でスペースを確保しておく。

 次に、実際に工場で使用する成形機の仕様に合わせて、ユニット部品(CADのデータ群)の配置/編集や部品属性の付加などを行う(図2)。その際に考慮すべき点は、金型の側面に付く部品と成形機の干渉と、成形品の取り出し方式(アタッチメントを用いるのか、自動落下させるのか)である。

〔以下、日経ものづくり2011年12月号に掲載〕

図1●成形品の配置
この段階でランナーやアンダーカット構造のスペースを見越しておく。
図2●成形機の仕様に基づくユニット部品の配置
成形機との干渉や成形品の取り出し方式を考慮しながら決める。

鈴木 裕(すずき・ひろし)
九州工業大学 先端金型センター長
1977年北海道大学大学院博士前期課程修了、1981年同大学から工学博士号取得。1987年九州工業大学工学部機械工学科助教授、1996年10月同大学教授に昇格。現在は同大学情報工学部機械情報工学科教授。2005年3月から同大学先端金型センター長を兼任している。この間、金型用3次元CAMシステムの開発、CAM内蔵型CNCの開発、ヘール加工システムの開発、金型設計支援システムの開発などに取り組む。