東日本大震災で浮き彫りになった「事業継続」という難題に、被災した工場が挑んでいる。未曽有の大災害を乗り切ったことで、事業継続に有効な方策とそうではない方策が鮮明になってきたからだ。

 本社を含む複数の拠点が被災したシチズン東北(本社岩手県北上市)の取締役である菅野喜次氏は「今回の経験を生かし、机上の空論ではない事業継続計画(BCP)を確立する」と意気込みを語る。実際、同社だけではなく、東日本大震災の経験に基づいて新たにBCPを策定したり、既存のBCPをより実効性の高い内容に修正したりした工場が多い。

 もちろん、自然災害の影響を完全に防ぐのは難しい。それは今回の震災に限らず、タイで起きた大洪水などからも明白である。従って、工場のBCPではさまざまな事態を想定しつつ、影響を最小限に抑え、なるべく迅速に生産を再開することが基本的な方針となる。

 復旧活動の根幹となるのは、(1)初期避難、(2)安否確認、(3)2次災害防止、(4)情報共有、(5)生産設備の修復、(6)生産の継続・再開および部品・材料の調達、の6つだ(図)。そこで本稿では、住友ゴム工業の白河工場(福島県白河市)、シチズン東北の相馬事業所(福島県・新地町)、東洋システムの本社工場(福島県いわき市)という規模の異なる3社の事例を基に、(1)~(6)の具体的な方策を紹介する。これらは地震や津波による影響を受けながら、早期の復旧を果たした「危機に強い工場」といえる。

〔以下、日経ものづくり2011年12月号に掲載〕

図●復旧活動の根幹となる6項目
本稿では、各工場の事例をこの6項目の観点から分析した。