昨今の円高を背景に、メーカーの海外シフトに拍車が掛かっている。海外での工場展開が喫緊の課題という企業も多いだろう。しかし、拙速な海外進出は後で苦労することになる。原因の1つが、現地の作業者をうまく育成できないということだ。

 その点で参考になるのが、タイガー魔法瓶(本社大阪府門真市)の取り組みである。同社は、将来のベトナムへの工場進出を念頭に、外国人向けの技能実習制度を活用して現地の研修生を3年をかけて日本の工場で教育する。海外工場をスムーズに立ち上げるべく、長期視点で取り組んでいるのだ。

ビジュアル・マニュアルを活用

 タイガー魔法瓶が利用しているのは、国際研修協力機構(JITCO)の外国人技能実習制度。同社はこれをうまく活用し、2008年8月に第1期生となる10人の研修生を受け入れた。日本語教育や同社の生産ラインでの作業実習を通じて「自社のものづくりの思想を身に付け、ベトナム進出時の指揮官となる人材を育てる」(同社常務取締役の久馬通孝氏)のが狙いだ。以後、毎年6人を迎え入れており、2012年夏には第5期生となる8人が加わる予定となっている。

〔以下、日経ものづくり2011年12月号に掲載〕