自社ブランドで製品展開する台湾の民生機器メーカーが、存在感をますます高めている。原動力は、固定費が低いこともさることながら、意思決定や開発が速いことだ。その実現に大きな役割を果たしているのが、PM(project manager)の存在である。台湾在住の著者が、組織運営の側面から台湾企業の強さを分析する。

意思決定に速度差が生まれるわけ

 「開発現場から、『いいね』『やるべき』という声が出てから、経営陣がそれを認めて実行を指示するまで、信じられないほど時間がかかることが少なくない」──。

 かつて世界を席巻した日本の民生機器メーカーが低迷している原因は何か、との筆者の問いに、ノート・パソコンEMS/ODMのトップ企業、台湾Quanta Computer(廣達)社の幹部であるAlan Tsai(蔡文弘)氏は、こう答えた。

 Tsai氏と同様に、日本の民生機器メーカーと付き合いが深い台湾企業の幹部もこう述べる。「欧米の企業と比べて日本企業の経営陣は、決断することより慎重に会議することの方が大事だと思っているように見えて仕方がない」。

“速い”台湾が結果を出す

 多くの日本人にとってまだあまり馴染みが深くない台湾の民生機器メーカーだが、収益力では既に日本の大手民生機器メーカーを追い越している。中でもHTC(宏達)社は、過去3年半の連結営業利益が約4400億円に達する。これは、パナソニックの実績より約1000億円以上も多い数字だ。

 この収益力の差の最大の要因として挙げられるのが、「スピード」である。日本メーカーの意思決定が遅れて製品投入で後手に回った隙に、台湾メーカーなどがさっさと製品化して新市場で一定の地位を築いてしまった。製品を短期間で開発すれば、単位時間当たりのコストも下がるので利益を出しやすい。

『日経エレクトロニクス』2011年11月14日号より一部掲載

■申し入れ
2011年11月14日号の解説「台湾メーカー流『速さ』の秘密」中、p.70の図1のタイトル「日本企業は対応が遅い」との記述に関して、Quanta Computer社 Alan Tsai氏より趣旨が異なるとの申し入れを受けました。これに従い、「日本企業は速さを追求すべき」に改めさせていただきます。(2011年11月28日)

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