「実習 FTAの使い方」は、信頼性解析技法の1つであるFTA(Fault Tree Analysis、故障の木解析)で不具合の原因となる部品や現象の因果関係の推定、安全対策の検討などについて、具体的な製品を例示しながら実習形式で学んでもらうコラムです。

事故原因の影響度合いを発生ポイントで評価

 前回(2011年10月号)は、安全に関わる不具合を未然防止するために知っておいてほしい基本的な考え方や、FTA(Fault Tree Analysis、故障の木解析)の位置付けなどについて説明した。今回からは具体的な製品を例に、安全性を評価し、事故を未然に防ぐ対策を考えていく上でのFTAの使い方について解説する。

 最初の題材は、エアコン室外機だ。エアコン室外機の事故にはさまざまなものが考えられるが、ここでは火災事故を取り上げる。家庭内において発生した事故のうち、その原因に製品が関与したケースを調べてみると、火災事故が圧倒的に多いからだ。

事故情報を分析する

 エアコン室外機のリスクを見るためのFT図を作成する方法について、簡単に説明しよう。まずは、どのような事故がどのような原因で、どの程度の頻度で発生しているのかを知る必要がある。

 そこで役に立つのが、消費生活用製品の事故情報を誰でも検索できる、製品評価技術基盤機構(NITE)のWebサイトだ。今回は、2008年4月以降に受け付けたデータで分析した。ダウンロードしたデータを表計算ソフトなどを活用して整理し、エアコン室外機の火災事故における被害の程度と発生件数、その原因を把握する。

〔以下、日経ものづくり2011年11月号に掲載〕

松本浩二(まつもと・こうじ)
日本科学技術連盟 R-Map実践研究会 総括主査
PSコンサルタント〔製品評価技術基盤機構(NITE)技術顧問〕。医療機器メーカーで製品安全に携わると共に、1990年より日本科学技術連盟(日科技連)にて異業種企業と製品安全およびリスクアセスメント手法を研究し、国際規格をベースに独自のR-Map手法を共同開発した。2011年7月に経済産業省が発行した「リスクアセスメントハンドブック《実務編》」においては、同検討委員会委員長を務めた。