「退避命令が出ている工業団地から水が引くのに、(2011年10月20日現在から)約1カ月かかるといわれている」〔日本貿易振興機構(JETRO)アジア大洋州課課長の若松勇氏〕。

 タイはバンコクの北にあるアユタヤ県の工業団地で、同年10月初旬から見舞われた大規模洪水による浸水被害は、タイに進出する日系メーカーを長期的に苦しめることになりそうだ。10月20日現在、アユタヤ県のサハ・ラタナナコン、ロジャナ、ハイテク、バンパイン、ファクトリーランドの5工業団地と、パトムタニ県のナワナコンとバンカディ工業団地で退避命令が出ており、関係者は工場内の詳細な被害状況を確認すらできない状態にある(図)。

 ロジャナ工業団地に四輪車工場を構えるホンダは、「8日に工場が冠水し、10日頃に1.5mの浸水を確認したが、その後の状況は確認できていない」〔同社のアジア・大洋州地域の事業統括を担当するAsian Honda Motor社(本社バンコク市)広報〕。同工業団地に一眼レフカメラの工場があるニコンも「工場が2mの浸水被害に遭ったが、設備の被害状況など詳細が分からない。現在は、現場確認ができたときに速やかに動けるように被害を何通りか想定して準備している」(同社広報)という。

〔以下、日経ものづくり2011年11月号に掲載〕

図●2011年10月20日現在のタイにおける洪水被害県
洪水が発生しているのは28県。日系企業も多く入居するアユタヤ県とパトムタニ県の工業団地は、次々と浸水被害に見舞われた。被災した工場の生産品目は実にさまざま。現在も退避命令が出ているため、現場の状況を限定的にしか確認できない状況が続く。地図の出所:タイ政府水害・風害・土砂災害特別対策センター発表情報を基に日本貿易振興機構バンコク事務所が作成。
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