電気信号よりも高速なデータ伝送を可能にする光インタフェース技術。長らく用途が限定されていた同技術が、ついにノート・パソコンに搭載された。ソニーが、2011年8月に発売した「VAIO Z」に光インタフェースを採用したのである。光伝送採用には、光軸合わせや受発光部の配置など、特有の難しさがある。とりわけコスト増も課題視されていた。ソニーはこれらの難題を、いかにして克服したのだろうか。VAIO Zの内部を、実装技術に詳しい技術者と共に解析したところ、信頼性確保やコスト削減などに向けた、ソニーの試行錯誤の跡が浮かび上がってきた。

光インタフェースを使い、ドック内のGPUを利用

 「光伝送の場合、伝送路から発生する電磁雑音がほとんどなく、基板上でのクロストークの心配が少ない。そのため、設計レイアウトの自由度が高まる」(ソニーの技術者)─。

 データ通信速度の高速化や、伝送路からの放射電磁雑音を小さくできる光伝送技術。業務用ストレージ装置やスーパーコンピュータの基板間接続などに利用されてきたが、コストが高くなることから、民生機器での採用は進んでいなかった。

 その技術が、ついにデジタル家電で利用される日がやって来た。ソニーが、2011年8月に発売した薄型ノート・パソコン「VAIO Z」に光インタフェースを採用したのである。ノート・パソコンと、専用の外部ドッキング・ステーション「Power Media Dock」(以下、ドック)を接続する、最大10Gビット/秒の伝送路に光伝送技術を用いた。

 これまで、音声データをやりとりするためにプラスチック光ファイバを使った低速の光伝送技術が採用された例はあるが、これほど高速な光伝送技術が採用されるのは今回が初めて。それだけに、「ノート・パソコンのような民生機器に搭載される意義は極めて大きい。光伝送技術の普及の追い風になる」(ある機器内光配線の技術者)と、業界から大きな関心を集めている。

 光インタフェース採用には、受発光素子の実装や光ファイバの光軸合わせ、コネクタ接続時の位置精度向上など、多数のコスト増加要因や従来と異なる実装ノウハウが求められる。ソニーはいかにして、このような難題を克服し、光インタフェース採用にこぎ着けたのだろうか。本誌は発売直後のVAIO Z(Core i3モデル、3G通信機能なし)を入手し、その内部を実装に詳しい部品メーカー技術者と共に分析した。そこから見て取れるのは、信頼性確保やコスト削減に向けた工夫の数々だった。

『日経エレクトロニクス』2011年10月3日号より一部掲載

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