三協マテリアルは小径で結晶粒径の細かいMg(マグネシウム合金)ビレットを連続鋳造で造る技術を確立した。これまで必要だった押し出し工程を省いて、ビレットをそのまま鍛造工程に回すことができ、Mg鍛造品のコストを大幅に下げることができる。

 Mgは鍛造すると強さが大幅に上がる素材である。産業技術総合研究所が、最も一般的に使われるMg合金「AZ91」を室温で引っ張り試験したデータがある。77MPaだった0.2%耐力が圧縮後には159MPaに107%上がる。2倍以上だ。引っ張り強さは226MPaから330MPaに46%上がる。
 これは鍛造によって結晶粒径を小さく、室温での降伏強さを大きくできるからだ。しっかり応力をかけて使う部品なら、Mgは鍛造品で使いたい。
 しかし、残念なことにMgの鍛造品は自動車の素材としては市場競争力を持っていない。現在使われているMg部品の多くはダイカスト、チクソモールディングを含めた鋳造品である。鍛造品はコストが高いため、年間200~300tが使われているに過ぎない。使い道はほとんどがF1レースなどで使うホイールである(図)。
 当社は鍛造品のコストを下げ、ホイール以外の自動車部品で普及させようと、ビレットの新しい製法である「断熱鋳型連続鋳造法(以下、断熱連鋳法)」を開発した。現状で3000~5000円/kgしている鍛造用素材のコストを1000円/kgまで下げることを狙う。これはAlで言うと「6061」の押し出し棒と同じ水準だ。

以下、『日経Automotive Technology』2011年11月号に掲載
図 F1用のホイール
Mgの鍛造品として実用になっているほとんど唯一の例だ。