研究者の視点
野村證券産業戦略開発部 主任研究員 成瀬伸弥氏
野村證券金融経済研究所の自動車アナリストを経て、2009年7月から現職。リーマンショック前にいち早く完成車メーカーの業績悪化を予想。現在は自動車産業の調査に基づき、資金調達やM&Aの提案などを行う。

 震災からの迅速な生産復旧、絶え間ない現場のカイゼン、さらにハイブリッド車や電気自動車にみる先端技術や燃費性能など、日本の自動車産業が世界に誇るべき点は多い。また、雇用という面で見ても販売や整備を含めた自動車産業全体で日本の就業者の8.5%を占め、今も変わらず地方の企業誘致の花形である。
 しかし、アナリストとして株式市場という視点から見た景色は少し違う。借金には利子を払わなければならないように、株式には株主が求める利益というものがある。しかし日本の完成車メーカーはその最低水準を満たしているに過ぎず、海外主要メーカーの半分に留まる。ROE(株主資本利益率)は世界販売が回復し、震災の影響も限定的だった2010年度の上場完成車メーカー全10社の平均で7%で、海外主要完成車メーカー7社平均の14%に比べれば大きく見劣りする。

以下、『日経Automotive Technology』2011年11月号に掲載