電気自動車(EV)向けの充電インフラの管理システムに、クラウド技術を活用する試みが盛んだ。EVユーザーとインフラ設置者の双方に利点がある。NECは電子マネーの決済システムや急速充電器を手掛ける強みを生かして開発に力を入れている。

 NECは充電インフラの管理システムにクラウド技術を活用するため、日産自動車などと新会社の設立を検討していると発表したほか、国内や海外の実証実験に参加している。2011年後半には開発中の一部のシステムを販売する。
 クラウド技術の活用でNECは、充電インフラを使う車両のユーザーとインフラの設置者に利点が生まれると考える(図)。ユーザーに対しては、例えばスマートフォンなどに充電器の現在の利用状況を伝えられる。EVの充電には早くとも15~30分程度かかる。車両が充電器を占有する時間は長く、空いている充電器が分かると利便性が上がる。こうした用途に向けてNECは「スマート充電ステーション」と呼ぶサービスを提供する。充電器に通信機能を取り付けて利用状況をデータセンターに収集し、スマートフォンやパソコンで利用状況を見られるようにする。
 設置者は、課金の仕組みを構築しやすくなる。現段階ではEVと充電器の数が少ない上に、EVを普及させるための政府の補助金もあり、充電器の利用料を取らない事業者が多い。ただ将来にわたって補助金が出ることは考えにくく、利用料の徴収は避けて通れない問題になる。クラウド技術を使って充電器に課金のシステムを組み込めば、ユーザーはクレジットカードなどで利用料を支払える。設置者も現金を回収する手間を省ける。

以下、『日経Automotive Technology』2011年11月号に掲載
図 クラウドを使って充電インフラを構築
NECの充電インフラの概念図。