ドイツZF社は、乗用車用の9速自動変速機(AT)を開発、VDI(ドイツ技術者協会)が開催した自動車変速機に関する国際会議「Transmissions in Vehicles 2011」で公開した。エンジンを横置きした前輪駆動車向けで、最大トルク容量280N・mの「9HP28」と、同480N・mの「9HP48」の2種類がある。9HP48には、4輪駆動車用、HEV(ハイブリッド車)用も用意した。

 新型ATは遊星歯車機構を4組、シフト要素を6個使った(図)。従来の6速は3組/5個、8速(縦置きエンジン用)は4組/5個だった。
 シフト要素はクラッチ、ブレーキだけで一方向クラッチはない。クラッチのつかみ、離しのタイミングが完璧でなかった場合でもショックを出さないことが一方向クラッチの意義。同社は以前から一方向クラッチに頼らず、完璧なタイミングを目指すのが設計方針である。
 スケルトン図で見たときの特徴は、4組の遊星歯車機構のうち2組を内外二重にしたこと。内側の遊星歯車機構の内歯車の外面が外側の遊星歯車機構の太陽歯車になる。動力の伝達経路の組み合わせが増えるため、最小の追加部品で段数を増やすことができた。
 スケルトン図では二重だが、実際には二つの遊星歯車機構の位置は軸方向にずれており、ほぼ同じ径だ。片方の遊星セットの内歯車と、もう片方の遊星セットの太陽歯車をつなぐ回転部品がある。

以下、『日経Automotive Technology』2011年11月号に掲載
図 「9HP」のスケルトン図
右の黄色い囲みのところが内外二重の遊星歯車機構になっている。