2011年3月11日、東日本大震災の一連の地震によってコスモ石油の千葉製油所(千葉県市原市)で液化石油(LP)ガスのタンクが倒壊した。その衝撃で配管が破損、漏れたLPガスに着火し、火災に至った。配管の破損部に通じる遮断弁が開いた状態で固定されていたことからLPガスが漏れ続け、鎮火までに約10日を要する大事故となった。

 今回の事故では、「364番」と呼ばれるタンクが倒れたことが火災の発端となった(図1)。まず、震災当日の14時46分に発生した東北地方太平洋沖地震(市原市の震度5弱)により、364番タンクの支柱に対して斜めに設置した補強材である「筋交い」(ブレース)の多くが破断した(図2)。

 この段階では、364番タンクはまだ倒壊していなかった。しかし、約30分後の15時15分に発生した茨城県沖地震(同震度4)によって、今度は支柱が座屈した。最初の地震でブレースが破断したため、タンクの荷重が支柱に集中しやすい状態になっていたのだ。支柱を失った364番タンクは、地面に倒壊した。

 タンクの下には、LPガス配管が網の目のように張り巡らされている。倒壊したタンクの下敷きになった配管は、あちこちで穴が開いたり、ちぎれたりするなど破損した。そして、特に破損の激しい箇所から大量のLPガスが漏出し、程なくLPガスに着火した。

 高圧ガスタンクの配管には、こうした事故に備えて、ガスの供給を止める緊急遮断弁が設置してある。しかし、364番タンク周辺の配管では、後述の事情により緊急遮断弁を開いた状態で固定していたので、配管の破損部からLPガスが漏れ続けた。

 そのため、火の勢いは増すばかりで、着火から1時間強がたった17時すぎには、364番タンク周辺のタンクが内圧の上昇に耐えられなくなって爆発した。その後は延焼と爆発が連鎖的に進行し、17時50分までに計5回の爆発が発生。火災の被害が急速に拡大していった。

〔以下,日経ものづくり2011年10月号に掲載〕

図1●タンクの配置
地震によって倒壊した364番タンクと同じ区画内にあったタンク(364番を含む17基)は全て損壊した。うち4基が爆発・破裂した他、3基に穴が開いた。
図2●タンクの支柱とブレース
最初の地震でブレースが破断。これによって、支柱が荷重を横方向に逃がせなくなり、座屈した。ブレースおよびベースプレートは、満水状態の耐震性が十分ではなかった。