下の写真は、ある製品の試作品と、それを成形した試作型である(図)。製品は「うるおいジェルソックス」というフットケア用品で、AKAISHI(本社静岡市)が開発したものだ。

 ジェルソックスの材質はエラストマ、厚さは2.5mm。単純な形状のようだが、内面には細かな突起がある。エラストマは射出成形時に200℃以上の高温にする必要がある上、射出速度もかなり速くなる。その分、型には高い耐熱性と強度が求められる。

高い耐熱性の樹脂型で

 AKAISHIがジェルソックスを開発するに当たって、試作型を3次元プリンタ(3次元積層造形)で作製したのは、「製品と同じ材質の試作品を手に入れたかった」(同社商品開発セクション機能設計グループ&モデリンググループリーダーの村岡真氏)からである。柔軟性がある製品なので、静的な形状や大きさだけでなく、実際に履こうとした際にどのように変形し、収縮力が発生するかといった使い心地なども評価したい。しかし、3次元プリンタで直接作製できる試作品では同等の物性を実現することはできないし、金型を作製していては、低コストかつ短期間での試行錯誤を実現できない。

 そこで同社は、試作型を3次元プリンタで作製することに挑戦した。熱可塑性樹脂を溶融しながら積層していくタイプの3次元プリンタを導入し、速く安く型を作製したのだ。

〔以下、日経ものづくり2011年10月号に掲載〕

図●3次元プリンタで作製した射出成形用の試作型
上型/下型/中子は全て、ポリフェニルサルフォン(PPSF/PPSU)を材料として使う3次元プリンタで作製したもの。試作品は厚さ2.5mmのエラストマで、製品と同じ厚さと材質である。射出成形時の樹脂温度は200℃以上になる。