下の写真に写るのは、シューズメーカーのアキレス(本社東京)が開発した子供用運動靴のサンプルである。左側が当時、売り上げが伸び悩んでいた既存ブランドのもので、右側が、その起死回生を狙って立ち上げた新ブランドのものだ。この新ブランドは「ある機能」を持ち備えていたことから、子供たちの間で絶大な人気を得た。さて、その人気を支える技術が写真に写っているのだが、お分かりだろうか。

 答えは「左右非対称ソール(靴底)」。既存ブランドのソールデザインが右足と左足で対称になっているのに対し、新開発のソールでは非対称になっている。両足とも、左側(写真では右側)により多くのスパイクを配置することで、トラックのコーナーを左回りで回るときに滑りにくい構造になっているのだ。ブランド名は「瞬足」。子供たちに提供しているのは「運動会で転ばずに速く走れる」機能だ。2003年に発売し、今では年間600万足を売り上げる「マンモスブランド」に成長した。

 なぜ同社は瞬足のようなヒット商品を生み出せたのか。それは同社が顧客自身も認識していなかった「潜在ニーズ」を引き出し、それを満たす商品を提供できたからだ。

〔以下、日経ものづくり2011年10月号に掲載〕