農業の生産性向上を支援するために、センサやスマート端末などでさまざまな情報を収集し、その情報をクラウドなどで共有する取り組みが活発化している。富士通は和歌山県のみかん農家と共同で、高品質なみかんを栽培するための実証実験を開始。NECとNTTドコモなどは、東日本大震災の津波によって塩害を受けた農地の復興状況をモニタリングするサービスの提供を開始した。

 天候などの不確定要素に収量や品質などが左右されやすいこともあり、従来の農業は属人的なノウハウに頼りがちな部分が多かった。しかし、定量的なデータに基づいた分析によって、高品質な作物をより低コストで栽培することが可能になる。さらに、適正なコストで運営されているかどうかの検証、ベテランから若手へのノウハウの継承といった効果も見込める。ものづくりの分野から見ても、センサや情報機器といったハードウエア面、品質管理や生産管理といったソフトウエア面で農業へ貢献できる可能性が広がってきた。

高品質みかんの生産性を向上

 富士通は2011年春に、みかんを栽培する早和果樹園(本社和歌山県有田市)におけるIT活用の実証実験を開始した。早和果樹園では、6万m2の園地でみかんの栽培やジュース、ゼリーなど加工品の生産を行っている。

 実証実験では、園地内の5カ所に設置したセンサで気温や降水量、土壌温度などのデータを一定間隔で収集する(図)。さらに、作業者がスマートフォンを使って自分の作業履歴や見回りの際に気が付いた異常などを登録する。園地内の5000本に及ぶ樹木には1本ずつ識別子(ID)を付与してあり、樹木の育成状況や病害虫の発生状況を詳細に管理することが可能だ。

〔以下、日経ものづくり2011年10月号に掲載〕

図●ITを活用したみかん栽培の実証実験
(a)作業者が利用するスマートフォンの画面。作業履歴や樹木の状態を登録する。(b)園地の中には気温や降水量、土壌温度などのデータを収集するセンサも設置してある。