表面が平らで手入れが簡単、じか火がなく立ち消えの心配がない──などの利点から人気の、電磁誘導加熱方式の調理器(IH調理器)。その最上位機種で、調理機能や省エネルギ性を向上させる動きが出ている。コイルの分割・配置パターンを工夫したり温度センサの測定温度範囲を拡大したりして、加熱をよりきめ細かく制御できるようにし、もっと省エネでもっとおいしい調理を追求する取り組みだ。
コイルを5つに分割
その代表例が、三菱電機ホーム機器(本社埼玉県深谷市)が開発し、三菱電機が販売するIH調理器「CSPT31HNWSR」「同PT31HNSR」「同PG21HS」である。新開発の5分割コイル「びっくリングコイル」を搭載して、ガスコンロでは困難な加熱部位の切り替えを可能とした。
通常、IH調理器では、同心円状に巻いたコイルを使う(図の左と中央)。だが、びっくリングコイルの場合は、コイルを中央、左側、右側、前側、後ろ側の5カ所に分割して配置する(図の右)。
これは、従来の同心円状コイルでは、特定の部位だけを加熱したり、加熱部位を移動させたりすることができないためだ。これまでのIH調理器では、加熱ムラや炊きムラが出やすい、フライパンや鍋を予熱する際に鍋肌(外周の立ち壁部分)を十分に加熱できない、鍋の形状やサイズに見合った加熱ができない、といった課題があった。コイルを分割して独立に加熱制御できるようにすることで、そうした課題の解決を図ったというわけだ。
部位ごとに独立して加熱を制御するには、分割したコイル間の電磁的な結合を低減する必要がある。三菱電機ホーム機器は、電磁界─回路連成解析技術を駆使することで、より適したコイルの分割・配置パターンを探り当てた。ちなみに、びっくリングコイルでは、左右と前後のコイルはそれぞれ電気的に接続してあり、独立で制御できるのは中央、左右、前後の3カ所となる。
〔以下、日経ものづくり2011年10月号に掲載〕