写真:上野英和

 生産技術を一言で表すと、造りたいものをどう造るかを決めることといえます。例えば、ハイブリッド車に載せるモータを従来と同じ造り方で製造したら、従来と同じ性能しか出ませんよね。だから、常に造り方を工夫して変えていかなくてはいけないんです。

 私たちは、生産技術を商品とサービスと並ぶ、ものづくりの根幹として非常に重視しています。実際、これで付加価値の大きさや競争力の強さ、商品の優劣が決まってしまいますから。では、トヨタがどんな取り組みをしているのか、具体的にお話ししましょう。

 私たちが志向するのは、トヨタらしいものの造り方。それを突き詰めれば、「1個ずつ造る」ことになります。その根底には、必要なものを必要なときに必要なだけ造るという考えがあります。それによって、非常にリーンな在庫で生産が回る。万一どこかに異常があっても原因を特定しやすく、すぐにラインを止めて改善を施せる。こうした積み重ねで生産性の向上が図れるのです。
〔以下、日経ものづくり2011年10月号に掲載〕(聞き手は本誌編集長 荻原博之)

新美 篤志(にいみ・あつし)
トヨタ自動車 取締役副社長
1947年7月生まれ。1971年3月名古屋大学工学部航空学科卒業、同年4月トヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)入社。1997年6月生産管理部部長、1999年6月生技管理部部長。2000年6月取締役に就任し、元町工場工場長と堤工場工場長を兼務。2002年6月米Toyota Motor Manufacturing, North America 社取締役社長、2003年6月トヨタ自動車常務役員、2004年6月取締役(専務待遇)、2005年専務取締役、2009年6月取締役副社長、2011年4月北米本部本部長に就任し、現在に至る。