エネルギー・ハーベスティング技術への投資と技術開発が活発化し始めた。とりわけ進展しているのが素子の低消費電力化だ。ここへきて、無線センサの平均消費電力が1μW以下に下がるメドが付きつつある。電力変換素子の小型化を阻んできたボトルネックが、いよいよ解消に向かう。

最近登場したエネルギー・ハーベスティング(EH)技術

 国内外のメーカーが「エネルギー・ハーベスティング(EH)」技術の開発を加速させている。EHは環境発電とも呼ばれ、身の回りにあるさまざまな微小エネルギーを電力に変換する技術である。具体的には、体温、歩行、太陽光や室内電灯、テレビや携帯電話機などの電波、地中の熱、植物や食物の電解液、日常生活や交通機関の振動/圧力などを電力源として利用する。

手作りからハイテクへ

 EHについては、欧州で10年以上前、日本でも数年前から注目が集まっている。そして最近は、三つの点で大きな動きがある。(1)日本の大手メーカーの参入、(2)電力変換素子の作製技術の進展、(3)電力変換素子を実装した無線センサ(EH素子)全体の消費電力の大幅低減、である。

 まず(1)については、以前から多かった国内外のベンチャー企業や部品メーカーに加えて、富士通やパナソニック、NTT、ルネサス エレクトロニクスといった日本の大手企業が、電力変換素子やEH素子の開発に本格的に乗りだしてきた。さまざまなEH素子をそろえ、「環境発電のデパート」を標榜するアルティマや東京エレクトロンデバイスといった商社も登場してきた。EHに関して、欧米系メーカーは橋のモニタリングなど産業用途を重視するのに対し、日本メーカーは日常生活や医療・ヘルスケアなどの、より身近な用途を志向している。

 (2)の電力変換素子の作製技術の進展も、こうした用途の変化を反映している。初期の同素子は個別部品による回路や、半ば手作りの技術で作製されることが多かった。最近では半導体技術やMEMS技術、最新のナノテクノロジーなどハイテクの粋を駆使したものが急増している。

 ハイテクの利用による最大のメリットは、素子形状を大幅に小型・薄型にできること。これにより、EH素子を衣服や身体に貼り付けられるようになったり、熱電変換と光電変換といった異なる種類の技術を組み合わせた電力変換素子の作製が可能になったりする。メーカーや商社の多くは「今後は、複数の電力源を使うマルチソースが一般的になる」(NTT)との見方で一致する。

『日経エレクトロニクス』2011年9月19日号より一部掲載

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