雑誌 特集

燃料電池車は消えたのか?

久米 秀尚、狩集 浩志=日経エレクトロニクス
2011/09/16 09:00
 

ブームを乗り越えて

 1995年にカナダBallard Power Systems社が燃料電池を搭載したバスを試作したのをきっかけに、自動車メーカー各社は燃料電池車の開発を活発化させた。そして2002年12月、トヨタ自動車とホンダが発売した燃料電池車のリース販売第1号に小泉純一郎首相(当時)が試乗し、一気に燃料電池ブームを迎える。

 ところが、その後は電気自動車ブームの到来とともに、燃料電池車はすっかり影を潜めてしまう。それでも、燃料電池車の火は消えてはいなかった。コツコツと技術開発を続け、さまざまな課題をほぼ解決しつつある。そして、2015年の市場投入をきっかけに、燃料電池車は普及への道を歩み始める。

『日経エレクトロニクス』2011年9月19日号より一部掲載

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第1部<総論>
技術課題を着実に克服
量産車の市場投入が現実に

ここ数年の技術開発により、燃料電池の量産が2015年をメドに始まる。悩みの種だった水素供給インフラの先行整備も道筋が見えてきた。先行する家庭用燃料電池とともに、燃料電池の普及が現実味を帯び始めている。

図 2015年から燃料電池が普及へ

 500万円程度の価格で燃料電池車(FCV)の市場投入が2015年から始まる──。最近の電気自動車(EV)ブームの影に隠れて姿を消していたFCVだが、ここへきて普及への道筋が見えてきた。

 口火を切ったのはトヨタ自動車だ。同社は、2010年11月に開催した「トヨタ環境技術取材会」で「セダン・タイプのFCVを2015年ごろから投入する。お客様に納得していただける価格で提供する」と宣言した。

 トヨタ自動車に加えて、日産自動車やホンダも2015年をメドにFCVを投入すべく動きだした。2011年1月にはトヨタ自動車と日産自動車、ホンダの3社が水素供給事業者10社と共同宣言を発表した。2015年ごろにFCVを国内で市場投入するのに加えて、普及の最大のネックとなっている水素供給インフラの整備を本格的に進めるというものだ。

 FCVの盛り上がりは、日本市場に閉じた話ではない。世界では、ドイツDaimler社や米General Motors(GM)社、韓国Hyundai Motor社なども2015年ごろの投入を狙い、しのぎを削り始めている。

 FCVが本格的に市場投入されるのを、材料メーカーも実感し始めている。燃料電池の電極用触媒を手掛ける田中貴金属工業は「我々も製造ラインの拡大など、量産の準備に入った」と語る。

『日経エレクトロニクス』2011年9月19日号より一部掲載

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<特別インタビュー>
自動車メーカー3社が語る

トヨタ自動車:
コスト削減には自信があります

日産自動車:
普及を見据えた次の技術が重要

ホンダ:
品質の追求はこれから正念場

『日経エレクトロニクス』2011年9月19日号より一部掲載

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第2部<燃料電池車編>
車両開発はコスト削減に邁進
水素インフラは規制の合理化を

2015年の市場投入を目指し、車両開発と水素供給インフラ整備に向けた動きが加速している。車両開発では耐久性と低温作動のメドが付き、車両価格もまずは500万円を目指せそうだ。水素供給インフラの整備では、建設費用の削減に向け、規制を合理化する動きが始まった。

図 車両開発と水素ステーションの整備で進む燃料電池車の普及

 燃料電池車(FCV)を2015年から市場投入するためには、車両開発と水素供給インフラの整備が両輪となって回っていかなければならない。このうち、車両開発では、耐久性や低温作動について課題解決のメドが付いた。2015年に向けて、あとはひたすらにコスト削減を追求するだけである。

 実際、2015年に新型車を導入する自動車メーカーであれば、そろそろ基本的な仕様が決まり、車両価格の見通しは立てているはずだ。2015年の導入期のFCVで目標とする燃料電池システムのコストは1万円/kWといわれてきたが、トヨタ自動車や日産自動車、ホンダは共に既に目標を達成しているとみられる。

 ただ、2030年の本格的な普及に向けては燃料電池システムのコストをさらに半減させる必要がある。それには燃料電池スタックや、水素タンクなど燃料電池システムの主要部品の材料コストを大幅に低減するため、材料から見直すような基礎的な研究を進めることが不可欠だ。

 一方、水素供給インフラについては、日本では諸外国に比べて安全対策への規制が厳しい。そのため、規制に従った水素ステーションを運用しようとすると、建設費用が高い上、利便性にも大きな障害がある。

 それでも、2015年までに先行して100カ所程度の水素ステーションを整備するためには、水素ステーションの設計や工事期間を考えると、2013年までに基礎的なデータを検証しながら規制の合理化を進めなければ間に合わない。

『日経エレクトロニクス』2011年9月19日号より一部掲載

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第3部<家庭用燃料電池編>
SOFCとPEFCが激突
2015年に本格普及へ

燃料電池車より一足先に、2009年に実用化にこぎ着けた家庭用燃料電池システム。2011年10月には、小型・低コスト化が有望な“次世代機”SOFCが登場する。受けて立つPEFCも、市場投入が始まるFCVとの技術の共用で迎え撃つ。

図 2030年の本格普及に向けてしのぎを削る
『日経エレクトロニクス』2011年9月19日号より一部掲載

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