筆者は、ものづくりを支える環境を憂いている。一番の問題は、製造者と消費者の隔絶だ。
筆者が小さかった頃、父は日曜大工、母は裁縫、筆者と兄はプラモデル作り、そして妹はビーズ細工に興じていた。あらゆるモノが今よりもずっと高価だったので、「節約」のためにひと昔前の人たちは皆、何らかの製造者であった。下手だけど作る人、かなり上手だがそれを生業にはしていない人、プロ・職人、という具合にさまざまなレベルの製造者が社会の中で広く“グラデーション”を構成していた。
今はどうか。消費者は、より消費者然とし、自らモノを作ろうという姿勢は見えない。何も作らない消費者はモノを見て製造者に思いを寄せたり、評価したりすることができなくなっている。
〔以下、日経ものづくり2011年9月号に掲載〕
3Dデータを活用する会・3D-GAN 理事長