数学を大まかに分類すると、幾何、代数、解析の3分野に分けられます。前回(2011年8月号)までの3回分の講義では、幾何の分野の中でも特にものづくりの現場で使える「曲率」について解説してきました。で、今回から取り上げるのは代数の分野。これまた、ものづくりの現場で存分にお使いいただけるテーマを取り上げてまいりますよ~っ。
(ここで、生徒の1人が勢いよく手を挙げる)
「あの、いきなり意見を言ってもいいですか?」
おっ、いいですね~。どうぞ、どうぞ。
「高校の授業では、幾何はビジュアルで分かるので面白いけど、代数はつまらないという印象があって…」
そうですね。実は私も、3分野の中で最も嫌いなのが代数でした。抽象的で役立ちそうもないし、何せ眠くなる(笑)。だけど、私はそんな代数を今回はあえて取り上げたいっ。多くの人が避けて通りたい分野にこそ、現実社会の課題をブレークスルーする糸口があるものだと思うからです。
えーっと、皆さんの疑い深い視線を感じますが(笑)、本題はここからです。実はそんな代数にも、現実社会でちゃんと使われているものがあります。それが「回転」。ものづくりの現場には、回転する物がたくさんありますよね。歯車、シャフト、ボールベアリング…。機械の設計に欠かせない物ばかりです。この回転を、代数を用いて精密に表現できるようになると、いろんなブレークスルーが起こります。
では、代数とは何か。その概念を、世界一分かりやすく解説いたしましょう。代数とは、ざっくり言えば「数の代わり」。1、2、3の数の代わりに、a、b、cのアルファベットなどを使います。昔の日本では、甲、乙、丙を使っていました。
〔以下、日経ものづくり2011年9月号に掲載〕
東京大学 教授