2010年6月29日9時20分すぎ、三重県四日市市にある三岐鉄道の富田駅構内では、日本貨物鉄道(JR貨物)の機関車を1番線から別の下り線に移動させていた。その際に、異音が発生。それを三岐鉄道の係員が聞き付けた。移動後に調べてみるとレールの一部は削れ、車輪の外側には脱線によるものとみられる擦過痕が残っていた。

 脱線したのは、JR貨物の「DD51-893」(以下893号機)。6月29日の朝、893号機は、富田駅の1番線に止まっていた。1番線は本線ではなく折り返しや空車の留置に使われる側線で、半径160mでカーブしている。

 JR貨物の運転士は、893号機を、ホームを挟んだ向こうにある下り本線に移動させる(転線)ため、時速14kmほどで四日市方向に走らせてから折り返して下り本線へ入線し、停止して貨物の連結を待っていた。すると、三岐鉄道の操車係から1番線走行時に異音がしていたとの報告があったのだ。

 そこで、検査係に要請して線路および車両を調べたところ、1番線のレールが削れて軌間内に削りかすが散乱していた他、893号機の後台車の第1右車輪の外側に擦ったような痕跡が見つかった。ただし、JR貨物の運転士は異音には気付いておらず、停止した時点では893号機は軌道上に載っていたため、脱線かどうかも分からかった。無論、人的被害もなかった。

〔以下,日経ものづくり2011年9月号に掲載〕