「スマートフォンのタッチパネル保護用ガラス(カバーガラス)の生産性が5倍以上に向上する」「亀裂の発生を抑えながら50μmより薄いチップにウエハーを分割できる」「これまでは困難だったシューズのリサイクルに可能性が出てきた」。剥がしたいときに剥がせる解体性接着剤/粘着剤が、生産性の向上や薄型・大型化、リサイクル/リユース/リデュース/リペアのための重要技術になりつつある。

 接着剤とは硬化して被着材と一体化することで被着材を固定するもの。一方、粘着剤とは高粘度で低弾性率の半固体のものであり、そのベトつきによって被着材を固定する。接着剤と違って、固定のために硬化させる必要はない。本稿では両者を取り上げる。

スマートフォン生産の切り札に

 解体性接着剤を生産性向上などにうまく生かした代表例が、冒頭で紹介したスマートフォン用カバーガラスの加工である(図)。スマートフォンといえば、景気低迷が続く中、需要を大きく伸ばしている数少ない製品の1つ。そのカバーガラスの生産において、解体性接着剤が生産性向上の切り札になっている。前述したように、解体性接着剤を使った新しい加工法では、従来の加工法との比較で生産性を5倍以上に高められる。

 スマートフォン用のカバーガラスは従来、400×500mmほどの大きな強化ガラスの板から1枚ずつ切り出していた。そのため、加工には多大な手間や時間がかかっていた。そこで、接着剤メーカーである電気化学工業のグループが考え出したのが、大きな強化ガラスの板を何枚も重ねた状態で複数のカバーガラスをブロックとしてまとめて切り出す方法である。

〔以下、日経ものづくり2011年9月号に掲載〕

図●スマートフォンのカバーガラスの一例
ブラックマトリックス(黒い塗料)が印刷された薄い板状の部分がカバーガラス。