電力損失を大幅に低減できる、次世代のパワー半導体として注目集めるGaN(窒化ガリウム)。このGaNを用いたパワー素子を利用する環境が今、急速に整い始めている。複数の企業が2011年後半から2012年にかけて、GaN系パワー素子を出荷開始する。同素子を使いこなすための周辺技術も整ってきた。

GaN系パワー素子事業に軒並み参入

 パナソニックは、2011年中に新たな電子デバイス事業を立ち上げる。それは、GaNと呼ばれる半導体材料を用いたパワー素子(トランジスタやダイオードなど)事業である。現行のSiに続く次世代材料の一つとして、今、多くの機器メーカーが注目する材料だ。

 パナソニックはまず、白物家電用のインバータや汎用電源で利用されるPFC(力率改善回路)などに向けて、耐圧600V級のGaN系トランジスタとダイオードを製品化する。同トランジスタ専用のゲート・ドライバICや、GaN系パワー素子を利用したPFC向け専用のコントローラICの提供も、ほぼ同時期に開始する。2012年には、GaN系トランジスタを搭載したモジュール製品の実用化も狙う考えだ。

参入企業が続々

 GaN系パワー素子事業に乗り出すのはパナソニックだけではない。これまで製品化していた企業は米International Rectifier (IR)社とベンチャー企業の米Efficient Power Conversion(EPC)社の2社にすぎなかったが、2011年後半から2012年にかけて、数多くの企業が次々と参入してくる。

 例えば国内では、富士通セミコンダクターが2012年の本格量産に向けて、「今まさに、量産の立ち上げ作業を行っている最中」(複数の富士通関係者)である。まずはサーバー用電源での利用を想定する。

 海外企業では、製品出荷で先行するIR社とEPC社がさらなる製品ラインアップ拡充を図っている。米Google社から2000万米ドルの出資を受けたことで注目を集めるベンチャー企業の米Transphorm社も、GaN系パワー素子を市場投入する。

『日経エレクトロニクス』2011年8月22日号より一部掲載

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