スズキは乗用車「キザシ」の燃費、乗り心地を良くするため、後ろのサスペンションのロアアームをAl(アルミニウム合金)製にして軽くした。ダイカストでは、価格が高くなる割には軽くならない。閉断面にできないので肉厚を下げにくいうえ、投影面積が大きいため、鋳造エネルギが大きくなるからだ。スズキは押し出し材を使い、その問題を解決した。

 キザシはエンジン排気量2.4L、全長4650mm、ホイールベース2700mmのセダン。軽量化と走りにこだわり、後ろのロアアームをAl製とした(図)。後ろのロアアームをAl製にすることはスポーツカーを中心に後輪駆動車には前例があるのだが、国内の前輪駆動車にはなかなか例がない。
 後ろのロアアームは、サスペンションフレームとナックルを結ぶリンクで、中央部でコイルスプリングを受ける構造である。このアームは、一般にプレス成形した鋼板2枚を溶接したモナカ(中空の閉断面)構造とすることが多い。アーム中央のスプリング受け部に加わる車体からの大きな荷重に対応するため、アーム中央をモナカ構造として高さをかせぎ、曲げ強度を確保している。
 鋼板でアームを造ると1台分、2本あたり5.4kgにはなる。「キザシ」は全体で1490kgのクルマだから、その中の5.4kgは大きい。また、ばね下の部品であるため、軽くすれば路面に対する追従性の点でも利点がある。何とかAl製にして軽くできないかと考えた。

以下、『日経Automotive Technology』2011年9月号に掲載
図 「キザシ」のサスペンション
後ろはマルチリンク式。右側(奥)にAl製ロアアームが見える。