電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)の車載電池から電力網への放電を許し、電力網からみて車両を2次電池とみなす「V2G(vehicle to grid)」の研究が進んでいる。電力網の品質向上に貢献するとされるが、どのような仕組みがあり、どの程度の効果があるのか。V2Gの研究に取り組む東京大学電気系工学専攻で特任助教の太田豊氏に聞いた。(聞き手は清水直茂)

東京大学 電気系工学専攻 特任助教 太田 豊氏

 V2Gには自律分散型と中央集権型の大きく二つの仕組みがあり、私は前者の、電力網の変動に応じて車両が自律的に充放電する自律分散型を研究している。
 電力網の突発的な変動は住宅のコンセントの電圧から大体分かる。例えば図(a)は、50Hz系のコンセントで測った周波数変動である。周波数が大きく下がっているのは、新潟県中越沖地震のときに柏崎刈羽原子力発電所が停止した影響だ。再生可能エネルギの導入量が増えると、突発的な変動が生じる得る。私の研究ではこの現象を車両で把握し、電池から放電させて周波数の変動を抑える。実現すれば火力発電所などの負担を減らせる可能性がある。

以下、『日経Automotive Technology』2011年9月号に掲載
図 発電所1基が停止した場合の車両の蓄電池の変動
数十万台のEV/PHEVの電池から放電させれば、発電所が停止しても車両の蓄電池のSOCはそれほど変動しない。