キヤノン電子は、厳しい市場とみられている業務用生ごみ処理機分野で新製品を開発した。複写機の内部の熱を管理する技術とノウハウを適用し、消費電力を劇的に下げたのである。販売計画は年間100台。食品廃棄物を肥料として再利用するこの商品は、日本だけではなく世界的に強いニーズがあると、同社は輸出も視野に入れている。

 環境規制によって、レストランや社員食堂など、業務で発生する生ごみのリサイクルが求められることが明らかになった2000年前後、大手家電メーカーから中小、ベンチャーまで多数の企業が業務用生ごみ処理機の分野に参入した。ところがその後、規制の内容がごみ処理機を導入しなくても対応可能であることが分かり、市場への期待が急速にしぼんで事業縮小や撤退が相次いだ。そこに今、あえて新製品を投入するのがキヤノン電子だ。

 2011年9月に発売する「Land care16?」は、生ごみを加熱する方式を一新するなど、設計を一からやり直した力作である(図)。同社代表取締役社長の酒巻久氏は、「環境分野で企業ができることは、省エネ・省資源、有害物質の排除、そしてリサイクルなどの資源循環。このうち、生ごみ処理機は資源循環に貢献する。しかも、生ごみ処理は社会的にも大きな課題なので、絶対に必要になるはず」と、厳しい市場環境の中、新製品を投入する理由を説明する。

 キヤノン電子の生ごみ処理機1号機の発売は2002年、2号機は2004年だが、従来製品と今回の製品の最大の違いは、複写機で培ってきた技術とノウハウを最大限に投入し、消費電力を劇的に削減したことにある。

〔以下、日経ものづくり2011年8月号に掲載〕

図●新開発した生ごみ処理機「Land care 16?」
発売は2011年9月。省エネでランニングコストが低いのが特徴。交流単相100Vの家庭用電源が使え、給排水設備も不要。処理能力は16kg/日。価格は119万円(税別)。ちなみに、2号機は130万円(同)だった。