2011年1月30日午後0時40分ごろ、東京都文京区の遊園地「東京ドームシティアトラクションズ」で走行中のジェットコースターの車両から乗客が転落した。乗客を座席にとどめておく安全バーが固定されていない状態で、車両が走行していたのだ。運営会社は安全バーの確認を怠った責任を認め、確認作業の徹底を宣言しているが、事故の真因はそこではない。

 ジェットコースターから転落したのは、当時34歳の男性来園者。転落後すぐに病院に搬送されたものの、約2時間後に死亡した。死因は、内臓損傷とみられている。

 事故が起きたのは、起伏やカーブのあるレールを小型車両が高速走行する「スピニングコースター舞姫」(以下、舞姫)という遊戯施設。遠心力で車両がヨー軸方向に360°回転しながら走行するのが特徴だ。1車両は、4人乗り。前列と後列に2つずつ座席があり、前列と後列が背中合わせになる向きに配置されている。

 被害者の男性は、一緒に来園していた知人男性などと舞姫の「5号」車両に乗り込んだ。係員は、乗客にT字形の安全バーを手元に引くように促す。安全バーを固定するためだ。そして、安全バーの位置を目視で確認し、発車ボタンを押した。次の車両との間隔を測るため係員はしばらく5号車両の姿を追っていたが、特に異変は感じなかったという。

 ところが、直後に事態が一変する。発車から約30秒後、乗車口から約100m走行した所にあるカーブで、男性は車両から投げ出されるように落下したのだ。男性はそのまま約8m下の地面に衝突。その衝突音で係員は異常事態に気付いた。

〔以下,日経ものづくり2011年8月号に掲載〕