三菱重工業は、同社の小型精密切削加工機「μV1」を用いて、非常に硬く脆い材料4種類の微細加工に成功した(図)。半導体のウエハーや医療器具などの加工を想定している。加工に成功した材料は炭化ケイ素(SiC)、サファイア、グラッシーカーボン(ガラス状の緻密なカーボン)、石英ガラス。工具位置をカメラで撮影しながら決める機構と、切り粉を回収するフィルタをμV1に組み込んでおり、工具にはダイヤモンド製を用いた。

 最新の医療用検査機器には、測定や分析のために微量の試料や薬品を流すμmレベルの大きさの溝が必要になる。このような溝や穴を切削で加工できれば、製造コストを削減できる。

 半導体分野では、フォトリソグラフィやエッチングの工程を代替することで、試作やサンプル生産においてリードタイムを大幅に短縮できる可能性がある。試作やサンプル生産では頻繁に修正と作り直しが繰り返されるが、現状ではそのたびにフォトマスクを造り、フォトレジスト塗布、露光、現像、エッチングと多くの工程を経なければならないので時間がかかる。これを切削加工で代替し、ウエハー表面の酸化膜を直接削り取ることで「所要時間を1/5~1/10にできると考えている」(三菱重工業工作機械事業部技術部超精密加工機グループ長の本多秀氏)。

〔以下、日経ものづくり2011年8月号に掲載〕

図●三菱重工業の小型精密加工機「μV1」
3軸仕様と同時5軸仕様の2機種がある。