通信ネットワークの進化に貢献してきた「光配線/光回路」の採用が、いよいよ基板内でも始まった。電気の高速伝送が限界に近づき、待ったなしの代替技術として注目を集めだしている。ソニーは、Intel社の「Light Peak」をパソコンに実装して、2011年夏に欧州で発売する。高密度実装の要求が強い高性能サーバー機や携帯電話機などでも、2012年には採用が本格化する。その後は、光回路の製造コストが大幅に下がり、あらゆる機器に光配線が使われることになりそうだ。マイクロプロセサのグローバル配線などに光が使われる可能性も見えてきた。光回路と電子回路を1チップ上に混載する、いわゆるSiフォトニクス技術の進展がその原動力だ。

普及に向け動きだした光配線/光回路

 光配線や光回路がさまざまな機器の基板に本格的に搭載される時期が迫ってきた。既に一部では採用が始まっている。

 例えば、東京工業大学が2010年夏に構築し、2010年秋のランキング「TOP500」で世界4位に入ったスーパーコンピュータ「TSUBAME2.0」。このユニット間を接続するインターコネクトと呼ばれる光配線7000本のトランシーバには、Siフォトニクスという技術で、光回路と電気回路を1チップ上に集積したICが用いられている。

 パソコンやテレビなどの家電製品への光配線の搭載も、いよいよ始まる。先陣を切るのはソニーだ。同社はパソコン「VAIO Z」シリーズに「Light Peak」を採用し、2011年7月末に欧州で発売する。Light Peakは、米Intel社がこの数年開発してきた光伝送インタフェースである。

 さらに、携帯電話機やスマートフォンなど身近な機器内でも、光配線を使う製品が2012年には登場する見通しである。

電気配線がいよいよ限界

 配線を電気から光に変える機運が高まってきたのは、消費電力や設計自由度、電磁雑音(EMI)、配線スペースなどで、電気配線の限界が本当に近づいてきたからだ。つまり、機器内で必要とされるデータ伝送の容量が電気配線技術で実現できる限界に近づいており、その結果としてさまざまな課題が深刻化しつつある。

『日経エレクトロニクス』2011年7月11日号より一部掲載

7月11日号を1部買う