三菱重工業など3社は、稲わらなどのセルロースからバイオエタノールを安価に製造する技術を確立した。低コスト化のカギは、汚染された土壌の処理と射出成形機の製造で培ってきた三菱重工業の技術だ。トウモロコシなどと異なり、食用と競合しない再生可能エネルギとして自動車燃料への利用を目指す。現在の製造コストは約90円/Lだが、40円/Lまでのコスト低減を視野に入れている。

 「ソフトセルロースを原料とするバイオエタノールは、食糧と競合しないことが最大の利点」と、三菱重工業機械・鉄構事業本部交通・先端機器事業部先端機器部開発グループグループ長の寺倉誠一氏は話す。

 二酸化炭素(CO2)の削減を目的に、ガソリンの代わりに自動車の燃料として使うバイオエタノールの需要がブラジルや米国で拡大している。その原材料としては主に、(1)サトウキビなどを搾った糖質原料、(2)トウモロコシや麦、コメなどのデンプン質原料、(3)稲わらなどのソフトセルロース系原料、の3つがある。ところが、現状のバイオエタノールは、(1)のサトウキビや、(2)のトウモロコシを原料にしているため、燃料用の需要が増えると食用を含めた全体の需給が逼迫し、価格上昇を招いてしまう。要は、地球温暖化防止対策と食糧問題が、ぶつかり合う状況を生んでいるのだ。

 そこで注目されているのが、(3)の稲わらや麦わら、サトウキビの搾りかすといったセルロース系原料である。これらは、木材などの硬いセルロースと区別するために、ソフトセルロースと呼ばれる。我が国において、稲わらや麦わらを原料にして価格競争力のあるバイオエタノールが製造できれば、巨大な新規市場が開けると期待されている(図)。

〔以下、日経ものづくり2011年7月号に掲載〕

図●製造したバイオエタノールや中間生成物など
左から、ソフトセルロース系原料を粉砕した原料、水熱分解されたセルロース主成分の中間生成物、ヘミセルロース主成分の中間生成物、バイオエタノール。セルロース主成分の中間生成物からはグルコース(C6糖)、ヘミセルロース主成分の中間生成物からはキシロース(C5糖)が得られる。これらを発酵させるとバイオエタノールになる。