「技術者のための最新中国事典」は、中国に詳しいコンサルタントであり、現役の技術者でもある遠藤健治氏が、最新の中国事情を伝えるコラムです。変化が激しい中国のものづくりや市場、人々の文化や習慣など、日本企業のビジネスチャンスにつながり得る「今」の情報を素早く捉え、独自の分析や対策などのヒントを技術者向けに提供します。

 中国の中でも急速な発展を遂げている深圳市。経済特区に指定され、海外から多くの工場の誘致に成功して、上海市や広州市と並んで「世界の工場」の一角を担っています。経済が発展するに伴って人口も増え、今や1400万人を超える巨大な都市に成長しました。

 ほんの数年前まで、この街は中国人はもちろん、日本人や韓国人などアジア人がほとんどを占めていました。それが今や、世界中の国々から人が集まる国際都市へと変貌を遂げつつあります。中でも目立つのは、南米系の人たちです。

地球の反対側から来る人々

 これにより、中国のビジネスパーソンの言葉にも変化が見られるようになってきました。これまでは英語や日本語が中心でしたが、最近は「Hola(オーラ、やあ)」「Buenas tardes(ブエノス・タールデス、こんにちは)」「Gracias(グラーシアス、ありがとう)」といった言葉まで飛び交うようになってきたのです。そう、これらはスペイン語。商魂たくましい中国のビジネスパーソンは、中国市場での商売に飽き足らず、中国から見て地球のほぼ反対側にある南米市場の開拓に向けて動いているのです。

〔以下、日経ものづくり2011年7月号に掲載〕

遠藤健治(えんどう・けんじ)
技術者・海外進出コンサルタント
日本と中国を含めたアジアのものづくりに詳しい技術者で、海外進出コンサルタント。京セラ入社後、開発部、生産技術部、品質保証部に勤務。中国工場における製造業務指導が評価され、同社を退社して精密機器メーカーの中国工場にて製造部長や品質部長を務める。現在、業務用機器メーカーの技術者として日本と中国を股に掛けて活躍中。著書に『日系中国工場製造部長奮闘記』『中国低価格部品調達記』(共に日経BP社)などがある。