第1部<総論>
白色LEDは頂点を極める
史上最高効率と最安が目前に

白色LEDが、間もなく200lm/Wという史上最も高効率な光源という地位と、蛍光灯よりも安くて、白熱電球に迫る安価な光源という称号を得る可能性が高まってきた。どんな機器にも、どこにでもLED照明が使える時代が到来する。

史上最安値の光源が目前に

 2011年3月11日に東日本を襲った地震と津波の影響により、関東地方や東北地方は深刻な電力不足に陥った。停止した原子力発電所を補うべく新たな発電設備の必要性が高まるとともに、電力消費の抑制が喫緊の課題になっている。

 中でも、即効性があるとして関心が高まっているのが、照明の“LED化”だ。照明は、日本全体の電力使用量の約2割を占める。これを、エネルギー効率が高いLED照明によって下げようというのである。

 LED化の活発な動きは、数字にも表れている。例えば、ジーエフケー マーケティングサービス ジャパンの発表によると、2011年3月中旬以降にLED電球の国内販売は急速に伸びている。同年4月第2週には、すべての電球に占めるLED電球の割合が数量ベースで27.1%、金額ベースで67.0%と、いずれも過去最高を記録した。特に、電力不足に見舞われている関東甲信越地方では同週の販売数量が前年比182.1%増であり、全国平均の同120.4%増を大きく引き離す。

(中略)

 こうしたLED化の動きを後押しするのが、白色LEDの低価格化である。これまで白色LEDは、白熱電球や蛍光灯といった既存光源に比べて高価とされてきた。光束1lm当たりの単価(明るさ単価)は、街路灯など一部の照明で白色LEDが使われていた2005年時点では10円/lm程度だった。これは、白熱電球が0.1~0.2円/lm、蛍光灯が0.3~0.6円/lmであることから、桁違いに高かった。だが、白色LEDは年率30%以上のペースで明るさ単価が下がっており、2011年に入ってからは業界平均で約0.7円/lmにまで下がった。大口顧客に対しては0.4~0.5円/lmと、蛍光灯に迫る。

『日経エレクトロニクス』2011年5月30日号より一部掲載

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第2部<白色LED>
ゴールは200lm/W超
使い勝手向上との両立図る

発光効率200lm/W超を目指して、白色LEDの改良は進む。しかし、必要な特性はもはや発光効率だけではない。白色LEDの普及が進む中、温度安定性や演色性など、差異化要因は多様化している。

限界領域が目前に迫る

 発光効率は年率15%で右肩上がりに高まり、間もなく200lm/Wに到達──。白色LEDの発光効率向上のペースはいつまで、そしてどこまで続くのであろうか。

 実は、研究開発レベルにおける発光効率は限界にかなり近づいている。青色LEDと黄色蛍光体という、最も高い発光効率が得られる組み合わせの白色LEDは、260lm/W程度が限界とされる。研究開発レベルでは既に200lm/Wを超えており、伸びしろは残りわずかしかない。「技術革新による効率向上のペースは間違いなく鈍っていく」(オスラム)。2020年より前には、同効率は頭打ちになるとみる関係者は多い。もっとも、白色LED製品の発光効率は、あと数年はLEDメーカーの実力値を図る上で必要な指標であるといえる。現状の製品の発光効率を限界値と比較すると、まだ2倍近い開きがあるからだ。

 注意が必要なのは、白色LEDの用途の広がりとともに、“発光効率至上主義”ともいえる状況が崩れつつあることだ。発光効率の高さは、エネルギー効率の高さを表すとともに、明るさ当たりの単価(円/lm)を下げられる重要な指標である。だが、多種多様な用途で使われだした今、発光効率だけでは機器メーカーなど白色LEDの使い手側の要求を満たせるかどうかが判断できなくなってきた。今後、その傾向は一層強まるだろう。

 こうした中、LEDメーカーは200lm/W超を狙う技術を開発するとともに、プラスアルファの特徴付けの開発を急ぐ。

『日経エレクトロニクス』2011年5月30日号より一部掲載

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第3部<照明とITの融合>
LEDが「光の質」への変化促す
制御技術は戦国時代に

これまで日本での照明は光の量が重視され、あたかも湯水のように光が使われてきた。今後は、LED照明とITを組み合わせることで、光の質重視への転換が可能になる。異業種から多数の企業がなだれ込み、照明産業にも大変革が訪れる。

必要な場所に必要なだけの光を提供へ

 LED照明は、発光効率が高い「次世代照明」として、節電への切り札になる。今後急速に価格低下が進み、本格的に蛍光灯などを置き換えていく流れになるのはほぼ確実だ。しかも、単なる既存の照明の置き換えにとどまらず、我々のライフスタイルをも「次世代」に変えていく先導役になる可能性が高い。LED照明は、生活や仕事の中での「光」との付き合い方を変えていく潜在能力を備えているからだ。

 その潜在能力とは、LED照明が発光効率の高さに加えて、調光・調色に非常に向いた照明であることだ。LED照明であれば、蛍光灯では難しかった0~100%の完全な調光が可能だ。蛍光灯にも調光可能な製品はあるが、0%から連続的に調光できるものはない。しかも、蛍光灯は低光量で点灯させると発光寿命が短くなるなど、犠牲になる部分が出てくる。点灯後、光量が安定するには数分の時間を要する場合も多い。LED照明であれば、発光寿命は縮まるどころか、むしろ長くなり、調光への応答性も非常に高いのである。

『日経エレクトロニクス』2011年5月30日号より一部掲載

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第4部<有機EL照明>
多様性で勝負に出る
蛍光灯よりも安くなる可能性も

有機EL照明は、面発光で薄く、透明にできるといった特徴が注目されてきた。最近では、天井の照明、装飾用、家具の一部になるなど用途の多様化が進んでいる。LED照明に比べて製品化は遅れたが、潜在能力は十分に高い。

2014年ごろにはLED照明器具の発光効率に並ぶ

 2011年は有機EL照明の「量産元年」といえる年になった。例えば、2011年1月にはLumiotecが、有機EL照明用のパネルを年産6万枚の規模で量産を始めた。同社は、2014年にはさらに大規模な量産に移り、2017年以降は一般照明の置き換えを目指すという目標を掲げる。2011年3月にはカネカも有機EL照明パネルの「商業的な受注販売を開始」(同社)し、2015年度には生産能力を年産10万m2に拡大予定だ。他のメーカーも次々とサンプル出荷や量産の計画を発表している。

 背景には、有機EL照明の潜在能力の高さがある。有機EL照明の開発は、LED照明に比べて数年分出遅れている。それでも、将来的にはLED照明器具を上回る発光効率を達成する可能性があるとみられているのだ。

『日経エレクトロニクス』2011年5月30日号より一部掲載

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