今や、通信インフラは、水やガスに並ぶライフラインの一つ。この重要な線が、今回の東日本大震災ではあっけなく無力化してしまった。固定電話網の交換局は津波で流され、携帯電話網の基地局は停電で使えなくなった。「津波や長期の停電は想定外」という言い訳は通用しない。災害時に求められる通信とはどのようなものか。被災地からの声を中心にまとめた。

津波と停電の二つが通信インフラの機能を停止

 東日本大震災は、通信事業者にとって二つの点で「想定外」な事象だった。

 一つは津波の破壊力である。最大高度38.9m、浸水面積561km2(東京23区の面積に匹敵)に及ぶ巨大津波は、携帯電話網の基地局、固定電話網の交換局、中継伝送路といった通信インフラを容赦なく破壊した。NTT東日本が持つ交換局などの通信ビル3000棟のうち、全壊は18棟、浸水が23棟。中継伝送路は90ルートが切断された。携帯電話網の基地局は、NTTドコモでは375局が損壊した。

 内陸部で地震や津波以上に通信インフラにダメージを与えたのが、長期にわたって続いた停電である。

 固定電話網では、NTT東日本の全交換局の1/3に当たる約1000局への電源供給が停止した。これら約1000局には非常用自家発電機が配備されている。しかし、燃料供給が滞ったことから、ピーク時には、津波で損壊した通信ビルをはるかに超える300局以上が機能停止に陥った。

 この結果、固定電話網では150万契約分が利用できなくなったという。「光ファイバ回線など通信網の多くは地下に敷設されており、地震にも耐えた。だが、津波や停電には弱さを露呈した」(NTT東日本 ネットワーク事業推進本部 サービス運営部 災害対策室長の中島康弘氏)。

 固定電話網以上に停電への脆弱さをさらけ出したのが、携帯電話網である。今回、大手3社合計で、全国の基地局の4%ほどに当たる約1万2000局が機能を停止したが、うち7~9割は停電による停止だった。

『日経エレクトロニクス』2011年5月30日号より一部掲載