サプライ・チェーンの混乱が続く

 6月危機──。

 東日本を大地震が襲ってから2カ月半。生産拠点の復旧が進むエレクトロニクス業界で、ある不安を指摘する声が広がっている。

 東北・関東地方を中心とした部品工場の被災や計画停電の影響で、多くの企業が震災後の部品調達に苦心した。だが、震災直後の強烈な不安に比べれば、実際の影響は大きくならずに済んだとの見方が強い。震災前に需要側の機器メーカーと供給側の部品メーカーの在庫水準が共に高かったことに加え、商社などの流通在庫がふんだんに存在する部品も多かったからだ。

 冒頭の“危機”は、2011年6月を境に、この2カ月半の間を支えたこれらの在庫が尽きるという懸念を指す。実際、一部の分野でその動きは表出している。例えば、マイコンの主力工場である那珂工場(茨城県ひたちなか市)が被災したルネサス エレクトロニクス。2011年5月に開いた決算会見で、これまで震災前の7割程度を確保していた製品供給が、同年6月以降に在庫切れで大きく滞る見通しを明かした。代替生産の体制の構築で震災前の水準に戻る予定の同年10月までは供給不足が続く。

『日経エレクトロニクス』2011年5月30日号より一部掲載

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