この道一筋ウン十年という会社に出合うことがある。いわゆる、専業メーカーで同じ(ような)製品を造り続けている意味での“この道”であり、業歴が数十年と長いのである。

 長いこと同じ製品を造り続けているメーカーには、何かしらの特徴があるのだろう。もし何にもなければアッサリと競争に負けて長く続くはずがないし、存在すらおぼつかない。

 だから、今存在している老舗メーカーにはよほどの競争力があるか、超ニッチな業界のために新規参入がないなどのいろいろな理由があるのだろうが、いずれにしても何となくやっていたらこうなったとは考えにくい。

 今回お邪魔した本多電子(本社愛知県豊橋市)という会社は、世界で初めてトランジスタを使用した魚群探知機を造った、文字通り、超音波機器の専業メーカーである(図)。

 とにかく、超音波しかやらない。1956年の創業以来、超音波にこだわり続けて、もう55年になるのである。しかし、超音波業界の現状を見ると、海外製品は押し寄せてくるわ、中小メーカーは乱立してるわ、とコスト競争も半端ではない激戦区。決しておいしい業界ではない。

 そんな厳しい業界なのに、なぜ本多電子が超音波一筋でやってこられたのか。きっと何かあるに違いない。今回の鉄人は、本多電子のウルトラCを探る。

〔以下、日経ものづくり2011年6月号に掲載〕

図●世界最初のトランジスタ魚群探知機

多喜義彦(たき・よしひこ)
システム・インテグレーション 代表取締役
1951年生まれ。1988年システム・インテグレーション設立、代表取締役に。現在、40数社の顧問、日本知的財産戦略協議会理事長、宇宙航空研究開発機構知財アドバイザー、日本特許情報機構理事、金沢大学や九州工業大学の客員教授などを務める。