「売り上げ偏重主義」とも揶揄される、極端なまでに売上高にこだわる企業が中国にはたくさん存在します。知名度の低い新興の中国企業にとって、売上高はその企業の価値を最も分かりやすく外部に伝える手段の一つです。売り上げが多いとは、すなわち企業規模が大きいということ。それなら、その企業が造る製品を購入するにも、その企業と取引するにも安心だ、と外部の顧客は思うものです。
ところが、ここにきて売り上げ偏重主義をまい進してきた中国企業の中に変調を来すところが出てきました。あれほどこだわっていた売り上げの増加を諦め、利益を重視する方向へと大きくかじを切り始めた中国企業が増えているのです。
「価格破壊」戦略で猛攻
ご存じの通り、ここ10年ほどで中国企業は急成長しました。その手法は極めて典型的な低価格戦略といえます。
日本をはじめ先進国の企業が新たな製品を生み出して開拓した市場に、まず韓国や台湾の企業が1~2割ほど低価格の製品で参入する。その後、しばらくして今度は中国企業が、先進国の企業からすると「価格破壊」と思える3割以上安い製品で市場に参入。既にその頃には製品のコモディティー(陳腐)化が進んでおり、価格の安さが顧客の優先順位の最上位を占めている。この時機をつかみ、市場の大きな部分を中国企業が奪っていく──(図)。こうした“必勝パターン”によって、家電製品や携帯電話機、2輪車、デジタル家電、産業機器など多くの工業製品のシェアを中国企業は高めてきました。
物価が安いこともあって、中国では、利益率が低くてもそれなりの利益(金額)が得られるならビジネスが成り立つと考える傾向があります。これが、中国企業を思い切った低価格戦略へと導きます。
〔以下、日経ものづくり2011年6月号に掲載〕
技術者・海外進出コンサルタント