「渋滞学・西成教授の数学で闘え」は、技術の現場で発生する課題を、技術者が自ら数学を用いて解決する方法を学べるコラム。数学に苦手意識を持つ人でも楽しく学べるように「これだけは」という要点のみをまとめる。

 2010年4月号からスタートした、この『数学で闘え』。ごく一部のマニアに支えられ(笑)、セカンドシーズンに突入する運びとなりました。ありがとうございます!

 これまでの約1年間、私たちは予測について勉強してきました。予測の精度をもっと高められれば、「想定外」の事象は減ります。ものづくりに携わる技術者にとって、想定外の事象の発生は可能な限り減らしたいもの。だから、そこに効く強力な予測の武器を伝授したつもりです。微分とか固有値とか、フーリエ解析なんてのもありました。

 では、セカンドシーズンでは何をやるのか。我々科学者は、予測だけではなく他にもたくさんの「飛び道具」を持っています。そこで皆さんに質問。第1時限の授業で私は「数学の地図」をボードに描いたのですが、覚えていますか?

(部屋の生徒たちを見回すと、皆、うつむいたまま)

 『数学で闘え』はエンターテインメントだーっ(笑)。ぜひ皆さんも、一緒に盛り上がってまいりましょう。

 1年くらい前、数学には3つの分野があるとお話ししました。その1つがホラ、「き」で始まって「か」で終わる…そう、幾何です(笑)。この他、数学には代数と、解析という分野があります。セカンドシーズンは、これら3つの分野から1つずつ、西成厳選の「現場で使える武器」を取り上げます。そして最後に、謎の武器Xをご紹介! その具体的な内容は、まだナイショ。セカンドシーズンの最後までお付き合いいただいた方だけにお教えする「特典」といたしましょう。

 さぁ、気分が高まってまいりました。まずは幾何の分野から、私が常々、ものづくり現場でもっともっと使っていただきたいと考えている武器について解説していきます。

〔以下、日経ものづくり2011年6月号に掲載〕

西成活裕(にしなり・かつひろ)
東京大学 教授
東京大学先端科学技術研究センター教授。1967年東京都生まれ。1995年に東京大学工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程を修了後、山形大学工学部機械システム工学科、龍谷大学理工学部数理情報学科、独University of Cologneの理論物理学研究所を経て、2005年に東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻に移り、2009年から現職。著書に『渋滞学』『無駄学』(共に新潮選書)など。