コストダウン、開発・生産リードタイム短縮など、活動のテーマや目標レベルは違っても、多くの企業が課題を解決しようと継続的な改善活動に取り組んでいる。しかし、国内市場の成長が緩やかになり、海外市場、特に新興国市場が拡大期となってきた現状に対応するには、課題の継続的な改善だけではなく、抜本的な業務改革を迫られることが多くなってきた。
抜本的な業務改革という観点では、従来はサプライチェーンを対象とすることが多かった。受注から納品まで、実際にモノとお金が流れる部分だからだ。しかし近年、このサプライチェーンへ、いかに優れた製品を効率的に供給するかという観点で、エンジニアリング・チェーンの改革も強く求められている。設計開発プロセスを中心としたこのエンジニアリング・チェーンが、製品そのものの価値を決めるからだ。
当然、エンジニアリング・チェーンの改革は従来も行われてきた。しかし、例えば実機レス検証によるコストダウンや期間短縮など、目先の効果を期待するものだったり、エンジニアリング・チェーンの一部分を対象としたものだったりすることが多い。本コラムでは、エンジニアリング・チェーンの抜本的な改革について、事例をベースに紹介していく。
第1の事例として今回からは、ある紙製品の製造装置メーカーA社で行った業務改革プロジェクトを取り上げる。まずはプロジェクトの実行計画を策定することに焦点を当て、施策の有効性を検証するプロセスを解説する。
〔以下、日経ものづくり2011年6月号に掲載〕
技術ディビジョン シニアコンサルタント
O2(http://www.o2o2.co.jp/)は、設計開発領域を中心としたエンジニアリング・チェーンを専門とするプロ集団。顧客企業の業務プロセス改革、高度な技術課題解決を総合支援。SDM、3D-DPRMなど独自の方法論を持つ。