【強さの秘密】水力発電設備に関する豊富な知見を基に、固定観念にとらわれない発想でコストとメンテナンス性に優れる簡素な構造のマイクロ水車を独自に開発した。水の力をいかに電力に変えるかに知恵を絞り、小回りの利く開発力できめ細かく対応する。

 明確な定義はないが、一般に、出力1000kW以下の水力発電のことをマイクロ水力発電という。田中水力は、このマイクロ水力発電用の水車と発電機の専門メーカーだ。

 日本国内には上下水道、農業用水、工場用水などが数多く存在する。マイクロ水力発電では、これらの既存の水路に新たにダムを構築したり別の水路を設けたりすることなく、高低差による水流の圧力と速度を利用して発電を行う。例えば、上水道の浄水場と配水池間には通常、20m以上の標高差があり、その落差によって水は必要以上に勢いよく流れる。従来は水圧を一定にするため、高低差が大きい箇所に調整弁を設けて減圧していた。しかし、調整弁の代わりに水車を設置すれば、未利用だった水の運動エネルギを電気エネルギとして回収できる。出力100kWの小規模設備でも一般家庭30軒分の電力が賄えるという。

〔以下、日経ものづくり2011年6月号に掲載〕