米Microsoft社は、トヨタ自動車にクラウドシステム「Windows Azure」を提供する。自動車メーカーがクラウドシステムを使うと、どんな利点があり、何ができるようになるのか。

 Windows Azureは、2008年に発表され、2010年から一般に使えるようになった比較的新しいクラウドシステムである。
 クラウドシステムとは、例えば自動車メーカーがプローブ情報システムなどを提供するのに必要なデータセンターやサーバー向けOSなどを、クラウドシステムの提供者に利用料を支払うことで使えるものを指す。自動車メーカーは、自社でデータセンターを持たなくて済む。

開発の手間を省ける

 クラウドシステムにはWindowsAzureのほか、米Amazon.com社の「Amazon Web Services」や米Google社の「Google App Engine」など数多くある。
 まずはクラウドシステム全般にいえる二つの特徴を、Windows Azureを例に取りながら紹介する。
 一つは、コストを削減しやすいこと。自社のデータセンターが必要ないので、その設備投資と、運用して維持する費用がなくなる。仮に100万台の車両に対してテレマティクスサービスを提供するとすれば、システムの内容にもよるが数千~数万台のサーバー機が必要になるだろう。初期投資は数億円に、運用・維持費は月額数百~数千万円にのぼるとみられるが、これがいらない。
 コスト削減には、必要なときに必要なリソースに対して利用料を支払えることも大きい(表)。一般にデータセンターは、ピーク時のトランザクション(データ処理の単位)を想定して構築する。このため、例えば深夜の交通量が少ない時間帯では用意した処理能力のほとんどは使われずに“ムダ”となる。

以下、『日経Automotive Technology』2011年7月号に掲載
表 料金は主に従量課金
Windows Azureの料金システムの一部を示した。コンピュータの性能やメモリーサイズなどによって、時間当たりの料金が変化する。