電気自動車(EV)開発ベンチャーのSIM-Driveは、2010年1月から2011年3月までの期間に進めてきた「先行開発車事業第1号」の試作車両が完成したと発表した(図)。開発した車両「SIM-LEI」は、日産自動車のEV「リーフ」と同程度の容量のLiイオン2次電池を搭載しながら、航続距離は1.5倍以上の333km(JC08モード)を実現した。

 この先行車開発事業は、企業・団体から2000万円ずつ資金を集めて量産が可能なEVを開発するというもの。今回の事業には34の企業・団体が参加した。参加した企業・団体は開発した車両の仕様書、基本図面、試験成績書を持ち帰ることができ、事業化したい場合はSIM-Driveの技術支援を受けられる。
 LEIは「Leading Efficiency In-wheelmotor」の頭字語をとったもの。今回、同車両を開発するにあたって、同社は「量産に直結するクルマ」を開発目標に掲げた。そのために、5人の大人が乗れる十分な居住空間と、300kmを超える実用的な航続距離を確保すること、量産に適した車体構造を採用することが課題となった。
 同社社長の清水浩氏がかつて慶應義塾大学で開発したEV「Eriica」は、EVの走行性能を極限まで追求したモデルで、駆動力を確実に路面に伝えるために8輪車とし、しかも8輪すべてにインホイールモータを内蔵する駆動方式を採用していたのが特徴だ。
 同車両は出力80kWのモータを8個積んだことや、300kmの航続距離を実現するために55kWhという大容量のLiイオン2次電池を搭載したことで、車両の製作コストがかさんでいた。空気抵抗を減らすために全高を1365mmと低く抑える一方で、床下に電池を搭載しているため、居住空間も広いとはいえなかった。
 今回のSIM-LEIでは、Eriicaでの経験を基に、より少ない電池で、同等以上の航続距離を確保することを狙った。また全高を1550mmと高くして十分な居住スペースを確保しながらも、空気抵抗を極限まで下げるデザインを採用した。さらに量産車に近い車体構造を採用することで、量産したいという企業が出てきた時に容易に実行できるように配慮した。

以下、『日経Automotive Technology』2011年7月号に掲載
図 「SIM-LEI」の外観
空気抵抗を減らしつつ十分な室内スペースを確保することを狙った流線形のデザインを採用した。