世界最大の自動車市場の中国。だが、急速な市場拡大で大気汚染などの弊害も起きている。問題解決に向けて電動車両の普及へと舵を切るとみられる中国政府だが、地場メーカーの飛躍を同時に狙った政策方針や標準化動向がまだ定まっていない。不利な状況の海外メーカーは、先行する電動車両で中国市場に浸透すべく動き出した。

 「中国で2012年を目標に電気自動車(EV)を生産する」(ホンダ 取締役社長の伊東孝紳氏)、「あらゆる環境技術を中国に導入していく。そのユニットも現地生産する」(トヨタ自動車 代表取締役社長の豊田章男氏)──。

 2011年4月19~28日に中国の上海市で開催された「Auto Shanghai 2011(上海モーターショー)」では、環境対応車を中国に積極的に導入する方針をホンダやトヨタ自動車の社長自らが登壇して熱く語った。その背景には、世界最大の新車販売台数を誇る中国市場が抱える大きな問題が見え隠れする。

 中国の2010年における新車販売台数は1800万台を超え、販売不振だった世界第2位の米国市場を700万台近くも上回った。中国市場の勢いは今後も続き、本誌が自動車メーカーや部品メーカーに取材した限りでは、2015年に年間3000万台にまで成長する見込みである。

暗雲立ち込める海外メーカー

 一方、こうした自動車市場の急拡大は大きな問題を生みつつある。都市部では既に慢性的な渋滞や大気汚染が深刻化している他、燃料の高騰が物流業者に大きなダメージを与え始めている。

『日経エレクトロニクス』2011年5月16日号より一部掲載

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